ブックレビュー 長塚 節

(★★★★☆ 星4つ)
(★★★★☆ 星4つ)


(★★★★☆ 星4つ)

表紙には「娘が年頃になって帝劇がどうのと言い出したらこれを読ませてやりたい」云々という趣旨の夏目漱石の言葉がある。農民文学の代表者である長塚 節の代表作だけに、中身がつまっていて、もう1世紀ほど前にもなるが、その時の日本の農村はこんなであったのかという様子がつぶさにうかがえる。なぜ夏目漱石がそんなことを言ったかというのは、もちろんこの『土』には、貧困に喘ぎ、生きるか生きないかというぎりぎりを生き抜こうとする農民の姿がつぶさに描かれているからで、ことに元祖おしんというか、登場人物のおつうの姿には、誰もが瞠目し、日頃の贅沢を身につまされることだろう。

あまりにもリアルに詳細に描かれているがゆえに、現代人には読みにくい。特にいわゆるずうずう弁で書かれてあると、ことによると聞くよりも理解しづらい場合もある。(聞けば類似の音運びで「ああそのことか」と類推できるのに、書かれるとあまりにも意味するところと字面が乖離してしまう)よくこれを書ききったものだと思う。そして、習俗や文化をよくぞここまで書いたものと思う。おそらく丹念な取材があってこそのことだろう。現代と違って、ちょっとキーボードを叩けば出てくるようなものではなく、大変な労作と思う。

文章的に面白いのは、常用描写に用いる副詞や擬態語・擬音語が、今では失われてしまった表現があることだ。そしてそれらは、そう表現されると実にしっくり来る感じで、今の言葉に失われてしまったのが惜しい。そうした意味でも、読む価値がある。ただし、文字は小さい上に旧仮名送りや漢字、そして上記の叙述で、読みにくいのは覚悟のうえで。実は後半は読み疲れて、斜め読みしてしまった。長塚 節に申し訳なく思う。

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