ブックレビュー 今邑 彩


よもつひらさか


(★★★★☆ 星4つ)

ホラー短篇集で、12個の物語が入っている。いずれの物語も、短い中で展開が二転三転して、テンポがよい。そしてよく練られている。好みの濃淡はあるけれども、現実感ある世界の中でありそうな出来事から、少しドリーミーでファンタジックな世界まで、この人は物語を編むことに長けているなと感じられる。

ホラーというと、年々内容が過激になっていき、いかに凄惨な場面が描かれているかに期待しがちだが、この短篇集の物語はいずれも今の血なまぐさいものに比べると上品で、その辺りは時代(93年から99年に『小説すばる』に掲載されたとある)なのか、女性が書いたからなのかと思うが、ホラーを面白くするには場面もさることながら、筋書きなのだなあと思わされる。
そして、ある種ののどかさが、まだレトロとまでは行かないにしろ、20世紀だったのだなあと読み手に感じさせる。

文章自体を文学的に味わえるかというと、そうした面白みは正直今ひとつに感じられたが、展開の面白いホラーが好きで、軽い読み物を探しているなら、この本はある程度の満足を与えてくれるだろう。(2014/4/15 記)