シャンパーニュレビュー Veuve Clicquot Yellow Label Brut

Veuve Clicquot Yellow Label Brut

様々なシャンパーニュを試していると、味わいの基準を忘れてしまいそうになる。よく目にし、飲む機会も多いVeuve Clicquot Yellow Label Brutをあらためて飲んで、自分の中の軸を確認してみた。

Veuve Clicquot Yellow Label Brut

Veuve Clicquot Yellow Label Brut(ヴーヴ・クリコ イエローラベル・ブリュット)は、ヴーヴ・クリコのスタンダード。「品質はただ1つ、最高級だけ」というマダムクリコの言葉が有名だが、ロゼやホワイトラベル、エクストラ・ブリュット等のバリエーションは別にしても、更にミレジメ(ヴィンテージ)や、ラ・グランダム、少量発表された長期熟成のカーヴプリヴェといった上級ラインがあるとなると、現代のイエローラベルにもマダムの言葉は当てはまるのかどうか、との疑問の声も上がるだろう。

しかし、メゾン単位で考え、かつ高級というものが、パッケージングやイメージも含めてのものだとしたら、イエローラベルも十分に最高級といえる。ヴーヴ・クリコはイメージ戦略が上手い。宣伝イベントにしろ、パッケージにしろ、ファッショナブルでリュクスなイメージが、トレードマークのクリコイエローとあいまって、鮮烈に記憶に残る。そういったことから、あまり日頃シャンパーニュは飲まない人でも、「高級シャンパンといえばモエ・ヴーヴ・ドンペリ」と3点セットで名を挙げる(ドン・ペリニヨンがモエ・エ・シャンドンの上級キュヴェであることはこの際置いておく。興味のない人にレクサスはトヨタだとか、DSはシトロエンだとか言うのと同じだ)。そうしたヴーヴ・クリコを位置づける戦略が、知名度とロイヤルティーに繋がっているのだろう。しかし、それにはもちろん内実が伴っていなければならない。すなわち、そのシャンパーニュがおいしくなければならない、ということだ。

さて、イエローラベル・ブリュット。セパージュ(使用されるぶどう品種の割合)は、ピノ・ノワールが50~55%、ムニエが15~20%、シャルドネが28~33%とのこと。スタンダードな味わいで、世界中のどこでいつ飲んでもヴーヴ・クリコと認識される味わいであるためには、セパージュの決定は難しいことだろう。熟成期間は公表されていないが、シャンパーニュの定めるノン・ヴィンテージの最低期間15ヶ月は維持されていなければならない。ドサージュも非公表。今時のbrutとしての標準的な量だろうと推察される。

意識して飲んでみると、こんなにミネラル感があって、酸がきれいだったかなと思わされる。ややくどい感じがするのはムニエか。桃、わずかな蜂蜜、白い花、ブリオッシュの香り。ミネラルや酸のバランスはうまいというかきわどいというか、完全に丸めてしまうと物足りないだろうし、これ以上尖るとフィネスという言葉は使えない、という間を行っている。そしてそれがヴーヴ・クリコの味を決定づけているのだろう。

色は淡め。
色は淡め。

香りや味の経時的変化は少ない。それだけに飲み飽きるという人もいるだろう。ラ・グランダムなどと比べると「完璧な」フィネスでない故に、飲み疲れも起こり得る。しかし、パリッとしたキャラクターづけには成功していて、こうしたシャンパーニュの常としてのパーティー需要にはうってつけだろう。いつ飲んでも味が変わらず、あとから来た人にも、開栓した時と同じ味で迎えることができるからだ。それに、比較的食べ物とのペアリングも幅広く対応できる。

結局、そうしたシーンも含めての味わいを計算し尽くして作られているスタンダードキュヴェの凄さが、イエローラベルなのだろう。スタンダードとして意識しておくと、他のシャンパーニュを飲んだ時にもそのシャンパーニュの特徴が分かりやすいし、もちろんこれ自体も飲む価値のあるシャンパーニュだ。

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