シャンパーニュレビュー Marc Hébrart Special Club 1er Cru Brut 2010


最近は普段飲み用に色々とレコルタン・マニピュラン(自社畑のぶどうで醸造する造り手)を試してみて、面白い発見が色々ある一方で、テイスティングの軸が分からなくなってきつつあるのと、やはり当たり外れ(まずいというのは滅多にないが、好みでないという意味での)の幅が大きいので、一旦ネゴシアン・マニピュラン(原材料のぶどうを買い付けて醸造するメゾン)の物に戻そうかと思っている。

が、やはりRMのは面白く探して試す価値があると思わせるのはこんな一本。

Marc Hébrart Special Club 1er Cru Brut 2010
Marc Hébrart Special Club 1er Cru Brut 2010

Marc Hébrart Special Club 1er Cru Brut 2010(マルク・エブラール スペシャル・クラブ プルミエ・クリュ ブリュット2010)は、スペシャルクラブの一員Marc Hébrartのトップキュヴェ。現在の当主のJean-Paul Hébrartはメゾンの名前でもある父のMarc Hébrartが1997年に引退して以降メゾンを引継ぎ、アイやアヴィズ等にある畑のぶどうから良質のシャンパーニュを醸していて評判が良いようだ。

独自運営の公式サイトがなく、詳しい資料が見つからず、ドサージュや熟成期間は不明。セパージュ(使用されるぶどう品種の比率)はピノ・ノワール6割、シャルドネ4割とか。

エチケット。1er cruを名乗るが、実際にはグラン・クリュのぶどう比率が高い。
エチケット。1er cruを名乗るが、実際にはグラン・クリュのぶどう比率が高い。

色はさほど濃からず、淡め。泡立ちも極上品。それらの印象よりも、まず圧倒されてしまったのはその味。よく、フルーティーな、とか、香りや味の要素としてフルーツコンフィのような、という言い回しはあるが、このシャンパーニュの、溢れんばかりのフルーツの凝集感はすごい。まるで人工的につけたんじゃないかと思うほどのそれは、フルーツドロップが液体になったよう。

しかしもちろん、単にフルーツ風味のアルコール炭酸飲料ではない。飲み進めると基底にあるミネラル感などが、シャンパーニュ然とした味わいを支えているのだなと分かる。その辺りの複雑味は、さすがスペシャル・クラブの一員。そして、丁寧に醸されていることを感じるのは、余韻は長いが舌には妙な引っ掛かりを残さない点と、酔い心地が快適である点。気づくとボトルは終わりに近づいていた。

フォアグラのパテ、蟹のパテ、コンテと合わせた。久しぶりにテラスで。
フォアグラのパテ、蟹のパテ、コンテと合わせた。久しぶりにテラスで。

飲んで素直においしいと思える上質な1本を探しているなら、お勧め。生産量・輸入量も少ないので、見かけたら買っておきたい。