(誘蛾灯 Pt2から続く) さて、とりあえず今夜の飯をどうするか。少し思案して、俺には飯を食わせてくれる所があるじゃないか、と、俺は元バイト先の統合先店舗に電話した。幸い、統合前の元店長が出て、俺のことを覚えていた。ちょ…
カテゴリー: 小説作品
オリジナルの小説作品です。ゲイに焦点を当てて書いています。
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(誘蛾灯 Pt1から続く) 以前、ガレージに放り出された時は辛かった。ケンゴと付き合う前の男の部屋にいた時のことだ。時々セックスはするが、関係性を敢えて言えば同居人で、付き合っているという意識はお互いなかった。俺はアルバ…
夕方、部屋に帰ってきたら、家財道具一式がなかった。まず、玄関に入った途端の殺風景さに、嫌な予感がした。靴箱を開けると、俺の4足の靴だけ。上の棚もきれいさっぱり何もなく、傘立ても、下駄箱の上にあった鍵を提げておくミニチュア…
毎夏、8月12日になると俺は夜中にこっそり精霊馬を作る。それをするのはサトルが寝てからのことだ。何もこっそりしなくてもいいのかもしれないが、精霊馬は、前のパートナーの和寿のためで、和寿がそれに乗って俺のもとを訪れてきてほ…
うちに泊まった男には、朝、紅茶を入れる。別に特別なサービスというわけではなく、俺が朝紅茶を飲みたいと思うからついでにというだけなのことなのだが。「どのお茶がいい?」と聞くと、遠慮なのか、こだわりがないのか、大体「なんでも…
「この傷は嫁に怒られるなあ」 ベンチプレスをやっていた上下黒ジャージの男は、起き上がると掌を自分に向けて、薬指にはめたリングの腹に見入っている。 「結構いっちゃってますねえ」 男の補助をしていたトレーナーは、気の毒そうな…
(第8章[QUICK]から続く) 次の土曜日。DRAWSTRING BARのドアを開けると、入口すぐのテーブルに、竜人をここで初めて見かけた冬の夜、一緒に来ていた2人がいた。話をしたことはなく、いつものように、するような…
(第7章[MYKONOS LOFT 噂]から続く) 受話器をフックに戻しても、外のサイレンは続いていた。QUICKのビルにまで入り込んでくるということは、かなりの台数なようだ。しかし、特にQUICKの中で何かが起こってい…
(第6章[竜人]から続く) 妙な噂を流すもんじゃない、と、俺がヒロシを叱ったのは、そろそろ4時を回るかという頃だ。俺とヒロシは、何となく人の入りが悪いので気分が乗らず、コロナのボトルに櫛切りのライムを押し込んでは飲んでい…
(第5章[QUICK 5階]から続く) 「実は次に電話をかけるまで待てなくて、ついてきた。」 竜人は便所の個室を出ると、隣り合った洗面台で手を洗いながらそう言った。冬の水の冷たさが辛いが、石鹸を洗い落とすまで堪えた。こん…