食に暮れ、食に明ける(年明け編)


年明けは大抵の家庭と変わらず、おせち。今年は中華風。馴染みの中華料理屋の物。保存料や添加物、化学調味料を一切使っていないとか。なかなか滋味があって良かった。

二段重。二人暮らしには充分。
二段重。二人暮らしには充分。

雑煮も作り、栗きんとんは俺もじょにおも好きなので、別にじょにおが作って用意した。2つとも写真は撮り忘れ。(笑)

そして一年のスタートはこのトップ・キュヴェで。おせちは午前中に年明けとして箸をつけたが、じょにおが実家の用事で出かけ、夜に開けた。

Henriot Cuvée des Enchanteleurs
Henriot Cuvée des Enchanteleurs

Henriot Cuvée des Enchanteleurs 1998(アンリオ キュヴェ・デザンシャンテルール 1998)。アンリオのシャンパーニュは、過去にミレジメ(ビンテージ)のBrut Millesime 1996と、スタンダード・キュヴェのBrut Souverainを飲んでいるが、ミレジメはシャンパーニュを飲み始めて間もなかった頃に飲んだため、正直あまり印象に残っていない。

アンリオの歴史は古い。一族がシャンパーニュ地方に根を張ったのは1640年のこと。時を経て1794年、ニコラ・シモン・アンリオと結婚してアンリオ家に入ったアポリーヌ・アンリオ夫人が、夫の没後1808年にシャンパーニュメゾンを設立。またしてもここの立役者も未亡人だ。以来、家族経営でメゾンを維持していて、現当主に至る。こうした系譜はシャンパーニュメゾンの権威付けとしてよく語られるところ。家族経営の良し悪しはあろうが、先代当主はヴーヴ・クリコの会長も務めたとかで、経営手腕もあるのだろう。

さてこのCuvée des Enchanteleurs、読みに忠実に従うなら「キュヴェ・デザンシャンテルール」なのだが、日本語ではリエゾンせず、単に「アンシャンテルール」と称されることの方が多いようだ。アンシャンテルールとは醸造担当の熟練職人のことでで、過去にその職人が行ったアッサンブラージュが最良であったことから、彼ら(祖先)に敬意を払ってこう名付けられたとか。
セパージュ(原料となるぶどうの品種構成)は、シャルドネとピノ・ノワールが50%ずつ。トップキュヴェだけに原料となるぶどうの産地も数を絞った名産品が用いられていて、それぞれシャルドネはCôte des Blancs(コート・デ・ブラン)地区のAvize(アヴィズ)村、Chouilly(シュイィ)村、Les Mesnil-sur-Oger(ル・メニル・シュル・オジェ)村、ピノ・ノワールはMontagne de Reims(モンターニュ・ド・ランス)地区のMailly-Champagne(マイィ・シャンパーニュ)村(マイィという名のシャンパーニュメゾンもあるが、これは村名)、Verzenay(ヴェルズネイ)村、Verzy(ヴェルズィ)村、の6村からの物に限られている。いずれもグラン・クリュ。
キュヴェ・デザンシャンテルールのドサージュ(澱抜き後のリキュールによる補糖)は数字がはっきりせず、アンリオ発行のシートには「10g/l以下」と記載されている。そしてトップキュヴェだけに、1998年物においては12年以上の瓶内熟成を経ているとか。

まあ要するに、営々と歴史ある家系で経営されてきた格式あるメゾンの手になるもので、原料を厳選し、手をかけて造られた、というシャンパーニュとしてはよくある謳い文句が並ぶわけだが、味こそが問題。どんなもんぞや、と飲んでみた。

今回は、チーズもいいものを合わせた。

コンテ、トリュフゴーダ、ゴルゴンゾーラ・マスカルポーネ、24ヶ月熟成ミモレット、クラッハー。
コンテ、トリュフゴーダ、ゴルゴンゾーラ・マスカルポーネ、24ヶ月熟成ミモレット、クラッハー。

1998年産で、2013年にもなると15年目。開けると、泡立ちは穏やかな部類。色は金色だが、シャルドネの緑のニュアンスもわずかに入っている。

香りはトップ・キュヴェならではの深い香りが最初からする。焼き菓子のような香ばしい香り、花の蜜、柑橘系の爽やかさもあり、少しヘーゼルナッツのようなナッツ系の香りやシダのような森の香りも感じられる。

12年もの熟成期間を経て蔵出しされるだけに、液体は上質。まろやかな中に細かい泡が立ち上るこれを口に含むと、品の良い酸と、ビロードのようななめらかな泡が心地よく、味わいは熟成した白ワインのよう。(まあ、シャンパーニュだってワインなのだから、当たり前といえば当たり前だが、「ワイン」を感じるシャンパーニュは意外に少ない)

品のある佇まい。
品のある佇まい。

飲み進めると、どんどん香りは深く、幅広く、複雑さを見せるが、絢爛豪華というよりは、奥深い品の良さが際立つ感じ。アンリオというと、ちょっとメゾンのイメージが沸きにくいし、一般にはマイナーな存在だろうけれども、この深さは、逸品。そしていわゆるフィネスは特筆もの。感心しながら心地よく飲める1本だった。

こうしてシャンパーニュのことばかり書いているとノンベエだと思われるので、ノンアルコールの飲み物も一つ紹介。クリスマスの頃に、フランス土産で友人からいただいたお茶。

マリアージュ・フレールの『タルトタタン』
マリアージュ・フレールの『タルトタタン』

まだ日本には入っていないとか。アップルティーならたまに聞くけど、タルトタタンとは?と飲んでみた。

これ、紅茶ではなく、ルイボスティーにフレイバーをつけたもの。入れると、少量の葉で鮮やかな色が出る。そして、本当にタルトタタンのような、甘く少し香ばしさのあるりんご菓子の香りがする。ストレートでもおいしいのだが、ミルクを入れると本当にまろやかで、これ1つでお茶菓子は要らないと思えるほどに味わいが豊か。大満足で、入れるたびにいただいたYさんに感謝しつつ飲んでいる。

さて、最近おいしい物を飲み食いするたびに、そうした物を味わうには体力が要るなあ、と思う。おいしい物のためにワークアウトも一層頑張らないと、と、ちょっと矛盾も感じながらのスタートなのである。