ルイ・ロデレール副社長来日特別ディナー


新宿伊勢丹でのシャンパーニュイベント『ノエル・ア・ラ・モード』の10周年特別企画『ルイ・ロデレール特別ディナー』にじょにおと行ってきた。限定30席というもので、「まあ当たったら儲けものだよね」とじょにおが申し込んだら当たったので、これは儲けものと。(笑)しかし、当たったといってもタダではなく、「参加できる権利が」という意味で、有料。そりゃそうか。

内容はというと、ルイ・ロデレールのミシェル・ジャノー副社長が来日し、ルイ・ロデレールのラインナップから4種などを説明しながら正月屋吉兆の懐石料理とともに合わせて楽しむ、というもの。

用意されたリーフレット。右から、当日のメニュー、シャンパーニュの詳細紹介、ルイ・ロデレールのカタログ。
用意されたリーフレット。右から、当日のメニュー、シャンパーニュの詳細紹介、ルイ・ロデレールのカタログ。

お隣は品のいいご婦人とその娘さんで、娘さんは若い感じだったが、お二人は親子だったので、我々2人が参加者の中でおそらく最若年カップル。他には白髪の紳士など。各参加者が席について、ディナーは午後6時きっかりにスタート。伊勢丹のワインバイヤーの挨拶で始まった。そしてミシェル・ジャノー氏の挨拶に続いてルイ・ロデレールが取得したドメーヌのスティルワインのロゼが、料理の八寸とともに供された。料理は、出るごとに料理長が説明する。

Bandol Rose Coeur De Grain Ch. Romassan 2011
Bandol Rose Coeur De Grain Ch. Romassan 2011
八寸。右上から時計回りに、胡麻豆腐と生雲丹、白子照り焼き、厚焼き 松風 海老御前、フォアグラゼリー、スモークサーモン、柔らか鮑 肝ソース。
八寸。右上から時計回りに、胡麻豆腐と生雲丹、白子照り焼き、厚焼き 松風 海老御前、フォアグラゼリー、スモークサーモン、柔らか鮑 肝ソース。

この八寸は良かったが、スティルワインのロゼでスタートしたのは、少なくとも我々の周りではあまり評判芳しくなく、「最初にシャンパーニュが飲みたかった」という声が多かった。ロゼもちょっとアルコールが尖っていて、これから4種来るシャンパーニュを楽しみにした方がいいという感じで、飲み残した人が多かったよう。

八寸も終わるところで、待望のシャンパーニュ第1弾が登場。

Louis Roederer Brut Premier
Louis Roederer Brut Premier

Louis Roederer Brut Premierは、Billboard Live Tokyoでライブを観る時や、妹との会食や、5月にハワイに行った時などにも飲んでいて、おなじみ。スタンダードシャンパーニュだが、スタンダードにはそのメゾンの特徴が最もよく表れると言われているように、ルイ・ロデレールもBrut Premierには力を入れているよう。期待通りの芳醇な香りと味わいで、ここで一堂も一安心。

このBrut Premierは次の椀と合わせられた。

蟹カルカン椀。
蟹カルカン椀。

まんじゅうの中からはかにみそと合わせられたズワイガニの身がぎっしり現れる。コクと香りがBrut Premierとよく合って、満足。

続いての料理に合わせるべく供されたシャンパーニュはこれ。

Louis Roederer Blanc de Blancs Vintage 2006
Louis Roederer Blanc de Blancs Vintage 2006

コート・デ・ブラン地区のシャルドネから醸されるこれは、年間12000本生産と、数が少ない。日本に入ってきているのは約1000本とか。チョーキーでミネラリーとよく表現される感じの、かなり辛口なブラン・ド・ブラン。温度のせいか、少し当たりが厳しいか、と感じられた。香りも豊かさには今一歩。ブラン・ド・ブランは、つい数日前偶然にも(笑)Amour de Deutzを飲んでしまったので、あの素晴らしいトップキュヴェの記憶が新しいと、つい比較して評価が辛口に。

このブラン・ド・ブランと合わせられた料理はこちら。

焼カラスミと炙り帆立の造里。
焼カラスミと炙り帆立の造里。

洋風に見えているが、ソースは刺身醤油にバルサミコとオリーブオイル。そしてカラスミと帆立の間に大根が挟まって、ミルフィーユ仕立てになっている。この皿ははっきり言ってイマイチ。カラスミが焼きすぎで硬くなってふくよかさを失い、弁当の中で放置された焼きタラコのよう。分量は比較的気前がいいが、その硬さでは口中の水分を奪われて、味わえない。厚みが無粋で、もう2ミリ薄くすればいいのに。そして炙り帆立は、炙る前に塩でも振って凝集させればよかったものを、そのままなので、ブラン・ド・ブランのシャンパーニュと合わせると味わいがどちらも浅すぎて、カラスミとのアンバランスが目立ってしまっていた。

次。シャンパーニュはロゼが登場。

Louis Roederer Brut Rose Vintage 2007
Louis Roederer Brut Rose Vintage 2007

ミレジメのロゼ。3分の2使用されているピノ・ノワールは古樹のものとか。残りの3分の1はシャルドネ。カタログには公言されていないが、シャンパーニュのロゼにありがちなアッサンブラージュ(赤ワインと白ワインを混ぜてロゼを作る方法)でなく、果皮を浸潤させて色づかせるセニエ法で作られているのだそう。若いビンテージのせいか、少し果皮の渋みが気になる感じもしたが、まずまず。

この料理には魚の焼き物が合わせられた。

ノルウェーサーモン 茸味噌仕立て
ノルウェーサーモン 茸味噌仕立て

これはちょっとモッタリした印象。手間をかけて作られているようだったが、それほどのものが感じられなかった。八寸に既にスモークサーモンが入っているのに更に鮭というのもちょっと。じょにおに言わせると、鮭の鮮度もイマイチと。(じょにおは魚、ことに臭いの気になる魚についてはうるさい)ここではぷっくりしたあんこうや、あるいは鱈なんかを出してくれればよかったのに、と思う。料理に関して段々厳しくなってきた…。

さて、期待するのはメインのトップキュヴェ。言わずと知れたクリスタル。

Louis Roederer Cristal Brut 2005
Louis Roederer Cristal Brut 2005

知っている人は知っていると思うが、クリスタルはCrystalと綴るのではなく、Cristal。2005は最新のビンテージ。この1杯はさすが、文句なくいい! 複雑で深い香り、泡と液体のなめらかさ、フィネスとダイナミックさと華やかさ、すべてがこのグラスにある。周りでも「おお」となっとくの声しきり。

これにはこちらのご飯が合わせられた。

フカヒレ丸小茶碗
フカヒレ丸小茶碗
黒毛和牛洋酒炊添え 湯葉御飯
黒毛和牛洋酒炊添え 湯葉御飯

前者はさすがの上品さ。張った汁には生姜が効いていて、逸品。後者はもはや過剰。白米は手毬寿司くらいの量でよかったと思う。そしてちょっと味がボケていた。

料理が出るごとに場内を回っていたミシェル・ジャノー氏がテーブルに来て、少し話して握手した。どうやら氏は女性の多かった(半数を超えていたと思う)会場にご満悦で、隣席の母娘にも上機嫌で接していた。場内は打ち解けて、それぞれ歓談の華が咲いていて、我々も時折軽く冗談など隣席と交わしながら楽しく食事をした。

食後の水菓子。果物ゼリー寄せ。
食後の水菓子。果物ゼリー寄せ。

アングレーズソースはよかった。中段に入っていた夕張メロンがちょっと瓜独特のイガイガした感じ。

そしてデザートワインとして、ポートワイン。これは不評。アルコールがツンとしていて、どうにも飲めたシロモノではなかった。舌の肥えた会場の人々は、飲み残した人多数、よって写真も略。お菓子に胡桃のポートワイン輪掛けが出たが、これは胡桃の味のみ。まあ、色で遊んだとの趣向か。

胡桃のポートワイン輪掛け
胡桃のポートワイン輪掛け

そして食事が終わり、ジャノー氏の〆の挨拶と、吉兆の料理人の紹介、スタッフのねぎらいの言葉があった。

マイクを持つのがミシェル・ジャノー氏、白い服が料理の岡田氏。
マイクを持つのがミシェル・ジャノー氏、白い服が料理の岡田氏。
ひな壇前に並べられていたシャンパーニュ。最初からの紹介順に左から並んでいる。(ロゼのスティルワインは下げられていた)
ひな壇前に並べられていたシャンパーニュ。最初からの紹介順に左から並んでいる。(ロゼのスティルワインは下げられていた)
食事を終えて自席前に並ぶルイ・ロデレールのエッチングロゴ付きグラス達。
食事を終えて自席前に並ぶルイ・ロデレールのエッチングロゴ付きグラス達。

さて、料理について厳しいことを書いた。「こんな贅沢な食事をしておいて何故シニカルな意見?」と思うかもしれないが、忌憚ない意見といったところで、概ねじょにおとの感想と合致。ルイ・ロデレールは、世に名を馳せる名メゾン。ともなれば、日本の粋の最先端を見せてもいいはずで、それが「ん?」と思わせるものであっては、和の心意気がすたるではないか。なので、もう少し頑張ってほしかったというのがある。グルメが集う「特別」ディナーともなれば、そのへんは厳しくジャッジされて然るべきなのだ。
それから、人足が足りなくて急遽駆りだされたと思われた伊勢丹の人達。サーブがなっていないマナーであるところ、大いに気になった。正面の皿の目の前に手を出してグラスを置く、しかも右から左から一貫しない。グラスとグラスをカチ合わせても謝辞の一つもなし。粋を演出するなら、最低限のディナーサーブの方法くらい心得ておいてほしいものだ。このあたりは伊勢丹の人がもし見ていたら、ぜひコメントを欲しいところ。(このマイナーな個人サイトのブログなど見ていないだろうが)

ともあれ、堪能した。なんだかんだ言っても、やはりルイ・ロデレールのシャンパーニュはセクシーな味わいで非常に優雅な時間を提供してくれる。隣席の母娘のお二人がとてもほがらかで洗練された人で、和んだのもプラスの材料。もう一度お会いして一緒に食事をしてみたいとさえ思われた。特にじょにおとは気が合っていた感じだった。そして思ったのは、シャンパーニュは時間をおいて1本付き合ってみなければ真価は分からないので、やはり、今度クリスタルはフルボトルで味わってみなければ!