Dianne Reeves Live 悦楽の記録その2 ジャズとシャンパーニュ


昨夜、Dianne Reevesのライブに行ってきた。会場はブルーノート東京。 表参道の駅から歩くと、南青山の骨董通り界隈はテナントビルの空きが目立つ。超一等地ゆえにテナントが立ち退くとなかなか次が入らず、少々寂寥感が。そんな中、ブルーノート東京はバブル期の1988年に開店して以来、この地で頑張っている。招聘するアーティストもなかなか豪華で、聴くなら本場に行くしかないかというような人が来るので、要チェックの場所だ。

Blue Note東京の入口。
Blue Note東京の入口。

さて、Dianne Reeves。日本での知名度はどうなのか知らないが、現代のジャズ界を引っ張る偉大な歌手だ。普段はR&Bやハウスを聞いている俺だが、個人的に好きなアーティストで、もう最初のアルバムを聴いてから20年を超える。レビューページはこちら

TONIGHT DIANNE REEVES!
TONIGHT DIANNE REEVES!

今回は行きたいなと思いながら躊躇していたら、じょにおが気を利かせて予約を取ってくれた。会場入りしてソファー席に着く。自由席への着席を待つ人もいたが、じょにおのおかげでスムーズ。そして、カチョカバッロとマンゴーのグラタン、オリーブのマリネとまずシャンパーニュを頼む。シャンパーニュはTaittinger Nocturne Sec(テタンジェ・ノクターン・セック)。ハーフで頼んだ。甘めのSecだが、これはそう重すぎる訳ではない。それでもコクを感じる味わい、蜂蜜などの甘い香りで、ノクターンの名のとおり、夜にふさわしい。

Taittinger Nocturne Sec
Taittinger Nocturne Sec

会場を見渡すと、年配の男性が目立つ。皆、「聴くぞ」という雰囲気で満々。ジャズクラブでディナーや酒を楽しみながら、というリラックスした感じではなく、ちょっとシリアスだ。ライブは9時半を少々回ったところでまずはバックバンドのセッションからスタート。かなり自由に個性を生かした演奏で、いきなりそれぞれソロの持ち場も披露したところで、Dianne Reevesが登場。アルバムジャケットでしか風貌を知らなかったが、実物を見るとジャケットから想像するよりはかなり大柄。(笑)そして、聴きなれた声が流れてくる。ライブで。

ライブが始まってからは怒涛。アルバムではスタンダードナンバーも多く、しっとり歌うところや、コントロールされた声使いが魅力だったので、もっとシックに展開するのかと思っていた。しかし、ライブは遥かにダイナミックだった。土臭いブルースもあれば、セクシーなラテンの大展開もあって、持ち駒の多いところはさすがに大御所だが、何といってもメインはビバップでのインプロビゼーション。アフリカのルーツを大事にする独特の節回しで押し寄せ、圧倒する。

会場との掛け合いも、かなり積極的に音楽に引きこもうとしていて、面白かった。ただし、↑に書いたように、マジメに聴きこもうとして訪れていた客が多かったせいか、会場の反応はいまひとつシャイに感じた。よもや自分が音楽に参加するとは思っていなかったのかもしれない。が、彼女は徹頭徹尾「音楽」だった。声は楽器のように鳴り響き、自分のパートでないところでも音に同化していて、歌わない時にも自分自身のメロディーが常に浮かんでいるようだ。そしてMCやメンバー紹介でさえもすべて歌で行う。音楽イコール彼女なのだな、と実感。

ちなみに、最初「あまり酔っ払っちゃうと困るしね」とTaittingerをハーフで頼んだのに、結局後半に追加でHeidsieck & Co. Monopole Blue Top Brutのハーフを追加で注文して、結果、フルで飲んだのと同じに。こちらの味わいはスパイスやバターのような風味が乗っておりじょにおにはその独特の味わいが新鮮だったよう。しかし独特だが飲みやすく、良いシャンパーニュ。

Heidsieck & Co. Monopole Blue Top Brutのミュズレ-とシートを示すBlue Note東京の番号札。
Heidsieck & Co. Monopole Blue Top Brutのミュズレ-とシートを示すBlue Note東京の番号札。

Dianne Reevesはまだコットンクラブでのライブを日程に残しているせいか、アンコール対応があっさりしていたのは少々残念だったが、本物を感じることができた貴重な機会で、飲んだシャンパーニュ以上に音楽に酔うことのできた一夜。行ってよかった! 「悦楽の記録 その1」で書いたように、「他に2つ贅沢事が」といったうちの1つがこれ。今月は贅沢つづきだ。