王道のシャンパーニュ


パーティーでは基本サーブ役に徹したので、飲み物も食べ物も口にはしたのだが、味わう暇もなく。それはじょにおももちろん一緒で、翌日にパーティーのお疲れ様会として、2人でゆっくりシャンパーニュを飲むことにした。

いつもだとここで「今月の1本」として、「そこそこの」値段のシャンパーニュの登場となる訳だが、まあ今月はまだ下旬もあることだし、(笑)「パーティーで出した大手メゾンのあれはきちんと飲んでみるとどんな味わいだったんだっけ?」と試してみることに。

Veuve Clicquot Ponsardin Brut Yellow Label
Veuve Clicquot Ponsardin Brut Yellow Label

Veuve Clicquot Ponsardin Brut Yellow Label(ヴーヴ・クリコ・ポンサルダン ブリュット イエローラベル)。知名度から言っても、売上から言っても、おそらくドン・ペリニョン、モエ・エ・シャンドンとこれが、日本での3大メジャー銘柄シャンパーニュだろう。あまりシャンパーニュを飲みつけない人も、何度か飲んだことがある人は多いのでは。俺も過去に何度もこれには遭遇しているが、有名メーカーの悲しさか、「お祝いだ」「ポーン」「かんぱーい!」と、まるで通過儀礼のように通り過ぎてしまって、これときちんと向き合ったことがなかった。VCPにはこのイエローラベルをはじめとして、トップレンジのラ・グランダムまで幅広いラインナップがあるが、シャンパーニュを楽しむなら、この王道たる1本は、一度は記しておかねばなるまい。

さて、開栓。泡はグラスに注いだ時には勢いが比較的いいが、すぐに落ち着き、細く底から1本上品に立ち上る感じ。色合いはほんの僅かにグリーンがさしているような淡いイエロー。

グラスに注いで落ち着いた様子。
グラスに注いで落ち着いた様子。

ブリオッシュの香りと、少しのイースト、花々やフレッシュな果実の香り。味わいは、ブリュット(辛口)にしてはさほど辛口すぎず、パーティーでこれを最初の方に出したのは正解だったと思うような、爽やかで華やかな感じ。ただ、ピノ・ノワール主体でダイナミックな味わいという定評だが、そう主張が強くはなく、たとえばチーズと合わせるにしても、複数の種類のチーズを同時に試したが、ピエダングロアのようなウォッシュタイプとしては比較的マイルドなチーズでも、チーズの味わいに負けてしまう。むしろカルパッチョのような魚介の皿のような軽いオードブルや、チーズにしても白カビの穏やかな味わいのものの方がしっくりくるように思った。

そして、味わいも、これはスタンダード・キュヴェの常と思うが、開栓後にさほど大きな変化はない。パーティーでは相前後して到着したゲストに注いでも「おや?」と思われてしまう心配はないだろうが、じっくりゆっくり1本を味わう場合には、ともすると退屈、と思われてしまうかもしれない。ただし、味はさすがに破綻がなく、高品質を旨とするだけはある。そして、個人的にはモエ・エ・シャンドンの凡庸さよりVCPの方がいいと思う。飲んですぐ、「ああ、ヴーヴ・クリコだ」という個性があるから。

そんな訳で、スタンダードなシャンパーニュとはなんぞや、と思いながら飲んだのだったが、スタンダードでメジャーなシャンパーニュで言えば、よりリッチな味わいのPiper-Heidsieck、あるいは、フルーティーさや爽やかさでいうと、日本では知名度がイマイチだが、Nicolas Feuillatteの方が、より好みだ。実はパーティーではPiper-HeidsieckとVCPを両方出したのだが、来た人はどちらが好みだったのだろう? やはり「ポーン」「かんぱーい!」と通過してしまっていたりして。(笑)